森のこーひーたより~生産者の顔と声~ 森のコーヒー生産者のコーヒー農園へ訪問した時の現地の様子やコーヒーへのこだわり、パートナーの皆さんの暮らしをレポートします。

こーひーたよりvol.240

「森のコーヒー生産者グループ」のメンバーの一人、エンリケ・スローパーさんは、有機栽培の中でも、“バイオダイナミック農法”という農法でコーヒーを栽培しています。

エンリケさんが、特にこだわりをもって栽培しているコーヒーの品種が“BourbonAmarelo”(黄色いブルボン品種・イエローブルボン)です。“ブルボン”と呼ばれるコーヒー品種は、フランスの宣教師が、1700年代の初頭にイエメンから当時のブルボン島(現在のレウニオン島)に持ち込み、そこから現在のブルボンの名が付きました。19世紀の中頃までは、ブルボン品種のコーヒーが島から持ち出されることはなかったのですが、1800年代の初頭に、宣教師達が、アフリカとアメリカ大陸に渡ったと共に、持ち出されてゆきました。ブラジルに、ブルボンが持ち込まれたのが1860年。そこから南アメリカ、中央アメリカにも紹介されてゆきました。

エンリケさんがカモシン農園に植えてる品種は、イエローブルボンの他には、「イアパール59」「カテゥアイ」「イカテュ」「カテュカイ」「ムンドノーボ」「カテュカイ・アス」などです。これらの違った品種を植える理由は、それによって収穫時期をずらし(品種によって、早生、晩生があるため)、収穫作業の時期が集中するのを避けるためです。

イエローブルボンの特徴は、その素晴らしいカップクオリティー(コーヒーが液体になったときの美味しさ)です。ただし、生産性は低く、病中害にも弱いという弱点があります。エンリケさんが、今でもイエローブルボンにこだわって栽培を続けている理由は、なんと言ってもその美味しさです。他の生産者が、より高い生産性、病中害対策品種をどんどん植えているなか、あくまでもイエローブルボンにこだわるエンリケさんの姿勢には、本当に頭が下がります。


こーひーたよりvol.239

「森のコーヒー生産者グループ」のジョン・ネットさんは、6代続いているコーヒー農家です。最初からこのサンパウロ州モコカの地でコーヒー栽培を続けられています。

ジョン・ネットさんが、農薬不使用・化学肥料不使用の“大自然農法”で、コーヒーを栽培してきた「サント・アントニオ農園」。その歴史の中で、何が一番難しかったかと訊くと、「一番難しかったのは、この農法でコーヒー栽培を続けていくのに、農園のスタッフも、うまくいくのかどうか疑っていたし、私の家族でさえも疑っていた。その疑いの中で、農園経営を続けていくのが、一番大変だった。」と語っています。

ジョン・ネットさんに昔の写真アルバムを見せてもらいました。そこに写っていたのは、ジョン・ネットさんがまだ若く、お父さんや親戚と写っている写真です。そこの写っている「サント・アントニオ農園」の姿は、今の“森”のようなものではなく、普通のブラジルのコーヒー単作の農園です。

ここから、ジョン・ネットさんは、「サント・アントニオ農園」を今のような姿に変えてきました。家族、親戚、農園スタッフもさぞ、心配したと思います。考え方が、あまりにも通常のブラジルのコーヒー農園と違うからです。

ジョン・ネットさんの「自然と共生する」という考え方で作った「サント・アントニオ農園」。ジョン・ネットさんが数々の人の反対を押し切って作った、まるで“森”のような、“森のコーヒー”の農園なのです。


こーひーたよりvol.238

「森のコーヒー生産者グループ」のジョン・ネットさんは、もう6代続いているコーヒー農家です。最初からこのサンパウロ州モコカの地でコーヒー栽培を続けられています。

ジョン・ネットさんの農法は、「有機栽培」とも違う“大自然農法”です。この“大自然農法”という名称は、ジョン・ネットさん自身が名付けた名前です。

ジョン・ネットさんに言わせると、「有機栽培」は、確かに農薬、化学肥料は、一切使用しませんが、基本的な農業のコンセプトは「通常農法」と同じだというのです。

「通常農法」では、化学肥料を使います。「有機栽培」では、化学肥料は使わないが「有機肥料」を使う。つまり、“化学肥料”が“有機肥料”に入れ替わっただけだと言うのです。

ところが、“大自然農法”は、根本的に考え方が違い、人間が農業をやる代わりに、大自然に農業をやってもらうという考え方なのです。

それは、例えば、牛の糞の扱い方にも表れます。「有機栽培」の生産者は、牛の糞を集めて“堆肥”を作ります。それを、コーヒー畑に肥料として撒きます。

ジョン・ネットさんは、牛の糞は、その場に置きっぱなしです。そうすると、地下20mから、色々な微生物、ミミズなどが、牛の糞を食べるために上がってきます。それによって土の中に空気の道が出来て、土がふかふかになると言うのです。

このようにして、牛や微生物、ミミズなどに働いてもらうのが、“大自然農法”だと言うのです。


こーひーたよりvol.237

「森のコーヒー生産者グループ」のジョン・ネットさんは、もう6代続いているコーヒー農家です。最初からこのサンパウロ州モコカの地でコーヒー栽培を続けられています。

歴史のある農家は皆そうかも知れませんが、ジョン・ネットさんも、ご自分の家系には大変なプライドをお持ちです。私も、「サント・アントニオ農園」を訪問する度、夕食のあとに、ジョン・ネットさんの家系の話を聞かされます。

「サント・アントニオ農園」の正式名称は、”Fazenda Santo Antonio da Agua Limpa” で、Jose Cristovam de Lima(ジョゼ・クリストーヴァン・デ・リマ)という人が創立者です。ジョン・ネットさんの名前も、Joao Pereira Lima Netoが正式名ですから、Lima(リマ)が一族の名前なのですね。

「サント・アントニオ農園」の正式名についているAgua Limpaというのは、“きれいな水”という意味です。たしかに、「サント・アントニオ農園」は、今でも水源が農園内にあり、その豊富で、清浄な水を使用できるのが、この農園の強みです。

ジョン・ネットさんが説明してくれる、この長い長い家系図をみますと、創立者のジョゼさんが生まれたのが1798年ですから、もう200年以上前の話です。

弊社・カフェーパウリスタも創業110年ですが、歴史の長さでは「サント・アントニオ農園」には負けます。


こーひーたよりvol.236

「森のコーヒー生産者グループ」のジョン・ネットさんの農園を訪問した時には、かならずジョン・ネットさんと一緒に、サント・アントニオ農園をくまなく見て回ります。

ジョン・ネットさんは、1990年代より全農園で農薬の使用を中止し、2001年より 農園にコーヒー以外の木を植えはじめ、農園を自然の「森」のようにしました。

そのように、農園を変えてきた理由をジョン・ネットさんに訊いてみると、

「コーヒーの家(この「家」(ポルトガル語で“カーザ”という言葉をジョン・ネットさんは良く使います。)は、森の中なんだ。特に背の高い木の木陰がいい、これは間違いない。 なぜなら、コーヒーが誕生したエチオピアでは、コーヒーは、“森”の中に生えているんだ。」

「ブラジルの大規模農園のように、森をすべて取り去って、そこにコーヒーの木だけ単作で植えると、コーヒーの木に直射日光があたり、コーヒーの木にはすごいストレスになる。 だから、コーヒーの木が弱って、病虫害にやられる。そして、病虫害にやられると、人間は、農薬を撒く。さらにコーヒーの木が弱くなる。そうやって負のスパイラルに入ってしまう。」

「私は、2001年より、農園にコーヒー以外の木を大量に植え始めた。それは、化学肥料をやめて、森のもっているエネルギーをコーヒーに与えることを考えついたからなんだ。」

ジョン・ネットさんは、農園内のコーヒーの木を一本一本見てまわって、その健康状態をチェックしてゆきます。


こーひーたよりvol.235

「森のコーヒー生産者グループ」のジョン・ネットさんの農園を訪問した時には、かならずジョン・ネットさん、農園のスタッフと一緒に、その年に採れたコーヒーをカッピング(コーヒーの味見)します。

それは、私もジョン・ネットさんも農園のスタッフも、コーヒーにとって品質(味の良し悪し)が極めて重要だと思っているからなのです。

もちろん農薬不使用、化学肥料不使用などの安心・安全・サステナブルなコーヒーの作り方も、とても重要です。ですが、やはり人はおいしいコーヒーを飲みたいもの。おいしいコーヒーを飲むと、自然に笑顔がこぼれてしまうくらいです。

カッピングには、毎年、農園の管理責任者のOrlando Araujo da Silva Filho氏(いつもはオルランドと呼んでいます。)、次女のマルことマリア・ルイーザさん。そして、今年は孫のエデゥアルドが参加しました。

自分の作っているコーヒーが、どのような味の特徴があって、どのように評価されているか、を知ることはとても重要です。

そのために毎年私が、他の「森のコーヒー生産者グループ」のメンバーのコーヒー、その他のブラジルのスペシャルティコーヒーのサンプルを持参して、「サント・アントニオ農園」のコーヒーの横に並べて比較してもらいます。そのような方法で、自分のコーヒーの風味特長、品質のレベルというものをわかってもらうのです。


こーひーたよりvol.234

「森のコーヒー生産者グループ」のメンバー、ジョン・ネットさんの農園「サント・アントニオ農園」に、私は年1回、収穫期である7月に訪問しています。

通常、収穫の時期というのは、実がなっている時ですので、花が咲いているとうことはありませんでした。しかし、最近の異常気象の影響か、昨年「サント・アントニオ農園」に訪問した時には、コーヒーの花が咲いていました。

カタカナで、コーヒーノキと書くと、それがコーヒーの木の正式な日本語名称です。アカネ科に属する常緑樹です。そこに生るのが、コーヒーチェリー(コーヒーの実)で、サクランボのような果実です。その果実の中にはいっている種が、コーヒー豆なのです。

コーヒーチェリーは、木の果実ですから、実になる前は花が咲きます。コーヒー豆からはちょっと想像できないような、とても愛らしい小さな白い花です。5つの花弁があり、ジャスミンのようなとても良い香りがします。

「花の命は短くて」と言いますが、コーヒーの花の命もたった2日で、その後散ってしまいます。コーヒーの花が一斉に咲く最盛期には、農園が雪景色のようい真っ白になり、とても幻想的な光景が広がるそうです。

ジョン・ネットさんは、農園回りをするときに、コーヒーの花を見つけると、必ず香りを嗅ぎます。私も、真似をして、香りを嗅いでみるとジャスミンのような、とても爽やかな良い香りがしました。


こーひーたよりvol.233

「森のコーヒー生産者グループ」のジョン・ネットさんは、コーヒー農園に、コーヒー以外のいろいろな木を植えて、農園を“森”のようにしました。

ジョン・ネットさんは、馬、豚、と多種多様な動物を農園に入れています。植物もそうですが、ジョン・ネットさんは、動物でも“多種多様”が好きです。いろいろな動物がいた方が良い。その方が、より“大自然”に近い。より多くのVIDA(ヴィーダ 生命)を農園に入れたい。 農薬に代表されるMORTE(モルチ 死)よりVIDAを追求する。

土の中の微生物にも、ジョン・ネットさんは注目しています。農薬を一切使用しないことで、地中に多種多様な微生物が棲息するようになります。もちろん目には見えないのですが、ジョン・ネットさんは、それこそ文字通り這いつくばって、農園の土を、その中にいる土壌微生物を感じようとしています。

土壌には多種多様の微生物が存在し、その数は1グラムの土壌に約100~1000万にもなると言われています。微生物は、他の微生物の生育を阻害する物質を出し、スペースの取り合いをしたり、餌を奪い合ったりしています。他方、お互いに共存するものもあり、増減を繰り返すことで、種類と個体数のバランスを保っています。これが土壌微生物の多様性です。

そうやって、毎日、農園の土に触れたり、匂いを嗅いだりしていると、土の健康状態がわかるようになるんだそうです。土壌微生物の多様性がある土は、健康な土だそうです。健康な土に生えているコーヒーの木も、また、健康になるとジョン・ネットさんは言います。


こーひーたよりvol.232

「森のコーヒー生産者グループ」のジョン・ネットさんは、5代続いているコーヒー農家です。最初からこのサンパウロ州モコカの地でコーヒー栽培を続けられています。

ジョン・ネットさんに昔の写真アルバムを見せてもらいました。そこに写っていたのは、ジョン・ネットさんの祖父の代の一族です。ブラジル一帯は、大自然のジャングルに覆われていました。農地を作り出すために、そのジャングルを開墾しているジョンさんの先祖の姿が、はっきりと写真に残っています。

この写真を見ると、なぜ近代農法が、ジャングルを完全に破壊して、コーヒーだけを単作で植えることを志向したのが、わかる気がします。昔は、ブラジルの自然があまりにも強大で人間が農業を行うには、まず、その大自然と対峙して、ジャングルを開墾し、森林を完全に取り去って、農地を作ることが必要だったのでしょう。つまり、自然をねじ伏せて、農業をすることが必要とされたのだと思います。

ジョン・ネットさんの祖父の頃のコーヒー生産者に、今、ジョン・ネットさんが行っている“森林農法”を見せたら、なんと言うでしょうか?

ジョン・ネットさんが言う「自然と共生する」というような考え方は、当時のジョン・ネットさんの先祖の方々には、きっと理解できないと思います。なぜなら、当時のブラジルの大自然は、人間にとって今よりはるかに恐ろしい存在であり、脅威だったからです。


こーひーたよりvol.231

「森のコーヒー生産者グループ」のジョン・ネットさんの農法は、農薬は一切使用しませんし、肥料もやりません。

「それで、よくコーヒーが収穫できますね。常識では考えられません。」とジョンさんに訊いたことがあります。

ジョンさんの答えは、

「森の力(ちから)を使うからさ。」

というものでした。

コーヒー発祥の地・エチオピアでは、コーヒーは、森の中に生えています。コーヒーは、日光を好む植物にもかかわらず、日当たりが強すぎると元気がなくなってしまいます。 森の中で生きることによって、他の背の高い木が、コーヒーのために日陰を作ってくれるのです。コーヒー農園の中に、いろいろな木や、動物や、昆虫、微生物が共生し、生き物の“森”を作ることにより、自然の生物ピラミッドができ、病害虫にも天敵ができることによって、特定の病害虫が、爆発的に発生することがなくなるのです。

ジョン・ネットさんは、毎日農園を回って、コーヒーの木の状態をチェックしています。


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